元教師です。
正直に言います。
屋久島 社員研修旅行の効果は、島に着いてからではなく「来る前の1時間」で9割決まります。
準備なしで飛行機に乗って、そのまま森に入っても、3日間はただ「気持ちよかった」で終わる。翌週の月曜、社員は前の週と同じ表情で会議室に座っている。この現象、僕は自分が主任だった頃、会議と授業の中でずっと繰り返していました。
この記事では、僕が教員時代に空回りしていた”本当の理由”をきっかけに、屋久島に来る前の1時間で書き出してもらっている3つの問いと、その1時間がなぜ3日間の深さを決めるのかを整理していきます。【2026年9月時点】
目次
この記事でわかること
- 屋久島 社員研修旅行の効果は、参加者が「来る前」に自分の目的を書き出せているかどうかで大きく変わる
- 事前1時間で書き出すべきは、①ここ数年の”山と谷”の線、②今の会社で”引っかかっている”感覚、③3日間で持ち帰りたい1つの言葉
- 事前準備は研修転移の一次条件(Baldwin & Ford, 1988)。事前の心の準備が、その後の学びの内在化を規定する
元教員の僕が、主任時代に空回りしていた本当の理由

2016年、僕は屋久島の通信制高校に赴任しました。カナダの山岳ガイドをやっていた頃の経験を教育にぶつけたくて、迷わず離島の先生になった。
赴任から2年半で主任になりました。
ただ、正直、うまくいっていなかった。
言葉が伝わらない。会議で決めたことが、翌週の現場で動いていない。若い先生に指示を出しても、なんとなくズレたものが返ってくる。夜、家で「あれ、なんで動いてくれへんのやろう」とため息をつく日が続きました。
当時の僕は、会議の準備を「今日話す内容の準備」だと思っていました。資料をつくる。段取りを決める。話す順番を考える。
でも、本当の準備は違ったんです。
本当の準備は、「今日の目当てを、自分と相手が事前に持てているか」。
授業でも同じでした。1時間の授業を始める前に「今日の目当ては?」と生徒に考えさせずに、いきなり教科書を開いていた。だから生徒は、その時間を”消化する側”になってしまう。1時間終わっても、何を持ち帰ればいいかわからないまま次の授業に向かっていた。
会議の参加者も、研修の参加者も、同じです。
「何のためにここに来ているのか」を、その人自身が言葉にできていない状態で場に入ると、どれだけコンテンツが良くても、3日間はただの気持ちいい旅行で終わる。
これは、僕だけの話ではありません。
あなたの会社の全社研修や、幹部合宿でも、同じことが起きていないでしょうか。
「来る前の1時間」で書き出してもらう3つの問い

屋久島でのプログラムを設計するとき、いちばん時間をかけているのは、実は「島に来る前の1時間」の設計です。
参加者に1〜2時間ほど、静かな時間をつくってもらって、3つのことを書き出してもらっています。
① ここ数年の”山と谷”を一本の線で描く
A4の紙を1枚用意して、横軸に0歳から現在までの年齢を書きます。縦軸は感情の起伏。転職、独立、結婚、子育て、大きな失敗、誰かとの別れ。人生の”上がった時”と”下がった時”を、曲線で描いてみる。
これを1〜2時間やると、面白いことが起きます。
自分でも忘れていた出来事が浮かんでくる。「あの時の選択が、今のこの仕事につながっていた」という線が見えてくる。
僕自身、独立を決めた時にこれをやりました。中学生の時、塾の先生に「行けるよ」と言われて背中を押された記憶。大学時代、キャンプリーダーをやっていた頃の「自然の中で人が変わる瞬間」を目撃した経験。カナダで永住権が叶わなくて帰国した日の悔しさ。教員時代の主任の空回り。全部つながっていました。
社員研修旅行でこれをやってもらうのは、”個人の物語”の中に、今の仕事につながる糸を見つけてもらうためです。
② 今、会社で”引っかかっている”のは何か
2つ目は、現在地の言語化です。
「今の仕事で、何がうまくいっていて、何が引っかかっているか」を、遠慮なく紙に書き出してもらう。人に見せない前提で書くから、本音が出やすい。
これがあると、屋久島に着いてからの対話が変わります。
森を歩きながら、焚き火の前で、初対面のメンバーと話す時に「僕は今、こういうところで引っかかっていて」という言葉が最初から出てくる。書き出していない人は、「まあ、ぼちぼちですね」で終わってしまう。
③ 3日間で1つだけ持ち帰るとしたら、それは何か
3つ目は、目的の焦点化です。
「学びを100個持ち帰りたい」ではなく、「1つだけ持ち帰るとしたら、それは何か」を書いてもらう。
これが一番、書けない人が多い問いです。
でも、書けなくてもいいんです。書けないまま来ても構わない。ただ、この問いを”抱えたまま”3日間を過ごすことに意味がある。森を歩いている時、焚き火の前でノートを開いた時、ふと「あ、これかもしれない」という言葉が降りてくる瞬間がある。それが、書き出してもらった問いへの、その人なりの答えです。
この1時間が、なぜ3日間の”深さ”を変えるのか
研修転移という研究領域があります。
「研修で学んだことが、現場でどれだけ実装されるか」を扱う研究で、その古典として引用され続けているのが、Baldwin & Fordの1988年の論文です。ここでは、研修の効果を決める要素を「研修前の入力(training inputs)」「研修中の学習」「研修後の転移条件」の3つに分けて整理しています。
面白いのは、この3つのうち「研修前の入力」の重みが、直感より大きいということです。
参加者の動機、事前の期待、事前に持っている問題意識。これが薄いまま3日間が始まると、どれだけ良い体験をしても、それは”個人の記憶”に留まって、現場に戻った時に消えていく。
もう1つ、僕自身が場をつくる人間として気づいたことがあります。
以前、noteに「つまらない場のつくり方」という記事を書きました。ある連続講座に参加者として出て、コンテンツは素晴らしいのに、なぜか楽しくなくて集中できなかった経験を言語化した記事です。
そこで見えたのは、”場が動かない”のは、指示が曖昧で「何を、なぜ、どうやるのか」が参加者に届いていないから、ということでした。
目的 → 手順 → 時間。この順で伝わっていないと、参加者は動けない。
事前の1時間は、この「目的」の部分を、参加者自身に書いてもらう時間です。ファシリテーターが説明する目的ではなく、”その人自身の目的”を持って来てもらう。ここが揃うと、3日間の対話の解像度が一段変わります。
SOUがやっていること — 事前カウンセリング60分+事前課題

株式会社創(SOU)の屋久島 社員研修旅行では、参加費の中に「事前カウンセリング60分(オンライン)」を含めています。
参加人数や目的によって設計は変わりますが、共通しているのはこの流れです。
- 事前カウンセリング60分(オンライン):経営者・人事担当者との対話で、”何を持ち帰りたい研修か”の枠を決める
- 参加者への事前課題(1〜2時間分):上記の3つの問いを、来る前に書き出してもらう
- 屋久島3日間:森歩き・焚き火の前での対話・少人数での振り返りを通して、事前に書いた問いに触れ直す
- 1か月後の振り返りセッション(オンライン):現場に戻った後、書き出した問いがどう動いたかを言語化する
出典:SOU 屋久島研修プログラム 料金・内容(2泊3日/最小催行3名/1名180,000円税抜〜/事前カウンセリング60分・1か月後振り返りセッション含む)
「事前に何を渡すか」を経営者側と一緒に設計する。ここに一番時間をかけています。社員に渡す事前課題を、経営者・人事担当者自身にも同じように書いてもらうのが、うちの流儀です。
社員に「山と谷を書いてみて」とお願いする経営者が、自分では書いていない、というのは、たぶん一番効かないパターンだからです。
よくある質問
Q1. 事前課題を出しても、忙しくて書かない社員がいます。どうすればいいですか?
無理に書かせなくて大丈夫です。書けないまま来ても、屋久島で書く時間を用意しています。ただし、”書けなかった”という事実自体が、その人にとってのメッセージになります。「今、自分は自分のことを考える1時間が取れないくらい忙しい」という現在地に、その人自身が気づく。それも大事なスタート地点です。
Q2. “山と谷”を書き出すのは、社員にとって重すぎませんか?
重い、と感じる方もいます。だから「人に見せない前提」で書いてもらう設計にしています。書いたものを提出する必要はなく、屋久島に持ってくるだけでいい。ただ、書いた本人にしか見えない紙の上で、自分の物語を1本の線にしてみる。この作業自体が、その人の”仕事の意味”を思い出させてくれます。
Q3. 事前と当日、結局どちらのほうが大事ですか?
順番で言えば、事前です。事前の1時間で「自分の目的」を持ってきていない参加者に、当日どれだけ良い体験を提供しても、現場に戻った時にすぐ消えてしまう。逆に、事前の1時間をしっかりやってきた人は、屋久島の3日間で”問いに触れ直す”だけで、深い変化が起きます。だから僕らは、当日のコンテンツを豪華にすることよりも、事前の1時間の設計に一番時間をかけています。
Q4. 何人からお願いできますか?
最小催行3名からお受けしています。少人数のほうが、事前カウンセリングでの目的すり合わせが丁寧にできるので、幹部合宿や、経営者+幹部数名の合宿には特に向いています。詳細は料金ページをご確認ください。
まとめ|研修の成果は”来る前”に仕込まれている
屋久島 社員研修旅行を検討している経営者・人事担当者の方に、いちばん最初にお伝えしていることがあります。
「島に来る日程を決める前に、来る前の1時間を設計しましょう。」
派手なアクティビティや、豪華な宿泊先や、たくさんのワークショップは、実はあまり関係ありません。参加者一人ひとりが、”自分の目的”を持って屋久島に来ているかどうか。それが、3日間の深さのほとんどを決めます。
これは、僕が主任時代に痛い目を見て、その後、独立して100人以上のクライアントと向き合って、屋久島で何十回も焚き火を囲んで、少しずつ確信してきたことです。
あなたの会社で次の全社研修や幹部合宿を計画するとき、当日のスケジュールを組む前に、こう自問してみてください。
「参加者は、来る前の1時間で、何を書き出してから来るだろうか?」
この問いに答えが出ないなら、いつでもSOUの個別相談にご連絡ください。事前カウンセリング60分は、屋久島に来なくても、単発で受けていただくこともできます。
著者:渡邉 匠(ちげ)
株式会社創(SOU)代表。屋久島在住。元・通信制高校教員(屋久島赴任8年、うち主任2年半)。カナダの山岳ガイド協会(ACMG)資格保有。2025年に株式会社創を設立し、屋久島リトリート/社員研修旅行/企業研修/コーチング養成講座を運営。焚き火の前で、経営者・人事担当者・チームの”本当の声”に耳を傾ける仕事をしています。