正直に言います。
10月に実施する屋久島リトリートで、僕たちはスマホを使わないルールにしました。
カメラは「写ルンです」1個を3日間で27枚。思考整理はA4用紙1枚とバインダー。それ以上の道具は、持ち込まない。
「不便じゃないの?」と聞かれます。でも、僕はこう思っています。
屋久島リトリートで深い思考を取り戻したいなら、まず道具を減らすほうが早い。【2026年10月時点】
目次
この記事でわかること
- なぜ屋久島リトリートで「スマホを置く」設計にしたのか
- 道具を減らすと、思考はどう変わるのか(研究と現場の実話で説明)
- 2026年10月のリトリートで実際に採用した「3つの引き算」
元教師です。
教員時代、僕は8年間、職員室の机にずっとスマホを置いていました。空き時間に見る。昼休みに見る。退勤後、家に帰ってからも見る。
「情報が入ってこないと不安」。そう思っていました。
でも独立して、ある時期からスマホを別の部屋に置くようにしたら、不思議なことが起きた。
考える力が、少しずつ戻ってきたんです。
今日はこの話をもう少し広げて、「屋久島リトリートでスマホを置く」の意味を書きます。
「青空って、こんなに綺麗だったっけ?」

先日、ある女性参加者をリトリートにお迎えしました。日々、動画コンテンツを作っている方です。
森に入る直前、僕は彼女にこう伝えました。
「スマホは、車に置いていきましょう」
最初は少し戸惑っていました。でも森の中を10分ほど歩いた頃、彼女がぽつりと言いました。
「青空って、こんなに綺麗だったっけ?」
その言葉を聞いて、僕は思ったんです。
彼女は青空を見ていなかったわけじゃない。見ているつもりで、見ていなかった。
これは特別な人の話ではありません。スマホを持ちながら「ゆっくりしたい」と思っている人全員に、同じことが起きています。
もう1人、経営者の話
別の回では、ある女性経営者が川のそばで、こう言いました。
「自分、いかに忙しくしていたか。いかに下ばかり見ていたか」
スマホの中に、本当に大事なものが入っていると錯覚してしまう。
でもそれを一度置いてみると、空があり、森があり、川があることに、やっと気づく。
屋久島リトリートで起きているのは、だいたいこの類のことです。
2026年10月、僕たちは「3つの引き算」を決めた

ここからが今回の本題です。
10月に実施するリトリートで、僕たちはプログラムの「足し算」を一度やめることにしました。代わりに決めたのが、3つの引き算です。
① スマホ禁止 + 「写ルンです」27枚
参加者はリトリート中、スマホを原則使いません。写真撮影は3日間で1個(27枚)の「写ルンです」を全員で共有します。
27枚は「少ない」と思うでしょうか。
でも、使い切る前提で枚数が決まっていると、1枚1枚が自然と「本当にここで撮りたい?」の問いに変わります。
スマホで無限に撮れる状態では、僕たちは「見てから撮る」のではなく「撮ってから見る」に変わってしまう。
目の前の景色より、画面の中の景色が主役になる。
27枚という制限が、「見る」を取り戻してくれます。
② 創作時間を外して、対話とシェアに充てる
過去のリトリートでは、絵本づくりなどの創作プログラムを入れていた回もありました。参加者からの評判は良い。
でも今回は、あえて外しました。
理由はシンプルです。時間は有限で、作品を作る時間を増やすと、話す時間が減る。
3日間で参加者と交わせる言葉の量は、意外と少ないんです。「もっと聞きたかった」「もう一度あの話を」で終わる人がいる。
だったら、作品の代わりに、対話を増やす。
今回の参加者は、30代・40代の方が中心です。「もっとモヤモヤしたい」「問いを深めたい」という声が出ていたので、創作より対話に時間を寄せた、ということ。
③ A4用紙1枚 + バインダー
リトリート中のジャーナリング(思考整理)は、スマホのメモアプリでも、きれいなノートでもなく、A4用紙1枚とバインダーでやります。
これは僕の長年の習慣でもあります。仕事の開始時にコピー機から取った無地のA4用紙1枚を広げ、そこに思考を出す。
罫線もない、枠もない。真っ白な紙は、「どこから書いてもいい」と教えてくれる。
デジタルのメモは速いけれど、構造化を手伝ってくれすぎる。箇条書き、見出し、インデント。便利な一方で、「まだ形になっていない思考」が入り込む余地を失います。
A4一枚は、不便なぶん、思考に余白を残してくれる。
なぜ「減らす」ほど、思考は深くなるのか
ここで、2つの研究を紹介します。
手書きのほうが、概念が残る
プリンストン大学のミュラーとオッペンハイマー(2014)の研究では、講義のメモを手書きで取った学生のほうが、ノートパソコンで取った学生より、概念的な理解を測るテストの成績が良いという結果が出ています。
出典:Mueller & Oppenheimer (2014) “The Pen Is Mightier Than the Keyboard” Psychological Science
ノートパソコンは速く打てるぶん、話をそのまま書き写す方向に流れる。手書きは遅いぶん、要約し、言い換え、自分の言葉に翻訳する作業が強制される。
この「翻訳」が、思考の深さを作ります。
屋久島でA4用紙を使う理由も、ここにあります。
自然環境は「反すう」を減らす
スタンフォード大学のブラットマンら(2015)の研究では、自然環境を90分歩いた人は、都市環境を90分歩いた人に比べて、ネガティブな反すう(同じ思考がぐるぐる回る状態)が減ったという結果が報告されています。
経営者の頭の中には、いつも複数の意思決定が同時に走っています。思考が「深まる」というより「ぐるぐる回る」状態に近い。
自然は、この「ぐるぐる」をいったん止めてくれる。
止まった後に、初めて深い思考が始まります。
屋久島リトリートで、実際に提供していること

ここからは、SOUの屋久島リトリートで実際に提供しているプログラムの実情です。
- 期間:2泊3日
- 定員:最小催行3名/最大6名
- 料金:1名18万円(税抜)
- 含まれるもの:事前カウンセリング60分/3日間のファシリテーション/宿泊/1か月後の振り返りセッション
- 出典:www.sou-yakushima.com/program/price/
「2泊3日で6名まで」というサイズは、意図的に小さく設計しています。
これより大きくすると、1人あたりに割ける対話の時間が目に見えて減るからです。
もし屋久島まで来るのが難しい場合、出張型での実施もご相談いただけます。
よくある質問
Q1. スマホを本当に使えない3日間、仕事に支障は出ませんか?
完全に通信を絶つわけではありません。朝晩、宿で緊急連絡を確認する時間を設けています。日中の森・川・焚き火の時間だけ、スマホを宿に置いてもらう設計です。
Q2.「写ルンです」27枚で、写真が足りなくなりませんか?
それが狙いです。無限に撮れる状態をやめることで、「今本当に撮りたい一枚」を選ぶ力が戻ります。「撮らずに見ることが増えた」という感想をよくいただきます。
Q3. 対話が得意ではないのですが、参加して大丈夫ですか?
大丈夫です。無理に話す場面は作りません。沈黙も対話のうち、という設計です。ファシリテーターがその場の空気を見ながら進めます。
Q4. 経営者ではなく、個人として参加してもいいですか?
参加者には、経営者・人事担当者・個人事業主・会社員など、立場の違う方が集まります。「立ち止まって考えたい」という共通の目的があれば、立場は問いません。
Q5. 事前に準備することはありますか?
事前カウンセリング(60分)の中で、ライフチャート・問いの整理・持ち帰りたいテーマの言語化をご一緒します。事前の準備自体が、リトリートの一部です。
道具を減らして、「見る」「考える」を取り戻す
今回のテーマを一言でまとめると、こうなります。
屋久島リトリートは、何かを足しに来る場所ではなく、何かを置きに来る場所です。
スマホを置く。
「ちゃんとしなきゃ」を置く。
いつもの役割を置く。
置いて、ようやく、見える景色があります。
その景色を、まずは3日間、思い出しに来てください。
屋久島リトリートの詳細は、こちらをご覧ください。
www.sou-yakushima.com/program/
著者情報
渡邉匠(ちげ)/株式会社創(SOU)代表/屋久島在住
元公立通信制高校教員(屋久島赴任)。教員8年目にコーチングと出会い、2025年に独立。屋久島を拠点に、企業研修・リトリート・個別コーチングを提供している。カナダ山岳ガイド協会(ACMG)資格保有。