【2026年10月時点】
元教師です。
中間管理職の”板挟み”は、消そうとしても消えません。上と下の板が動く限り、真ん中の人は挟まれ続けます。
だから鹿児島(屋久島)で僕らがやっている企業研修では、”板挟み”を消すのではなく、役割を”通訳”に置き換える練習をしてもらっています。上の言葉を下に翻訳する人、下の言葉を上に翻訳する人がチームにいれば、真ん中は消耗する側から、組織を動かす側になります。
目次
この記事でわかること
- 中間管理職の”板挟み”が構造的に消えない理由
- “板挟み”を”通訳”に変える3つの練習
- 屋久島2泊3日の企業研修で”通訳”を鍛える具体的な流れ
中間管理職の”板挟み”は、僕自身の話でもある
屋久島の通信制高校で教員をしていた頃、赴任2年半で主任になりました。
正直に書きます。空回りしていました。
校長からは「もっと数字を出せ」と言われ、担任からは「これ以上生徒を追い込めない」と言われ、生徒からは「先生の言うことは分かるけど、動けない」と言われる。
3つの声が僕のところで止まり、僕の中で消化不良を起こしていました。
夜、家に帰って妻に「今日も何も進まなかった」と言う日が続きました。
「主任になれば、何かが変わる」と思っていた自分が、恥ずかしかったです。
中間管理職を”板挟み”にしているのは、役職ではなく”通訳の不在”
主任時代の僕が空回りしていた理由を、独立して数年経った今の視点で見直すと、はっきり分かります。
僕は”板挟み”だったんじゃなくて、”通訳が空席”だったんです。
- 校長の「数字を出せ」を、担任と生徒に届く言葉に翻訳できていなかった
- 担任の「これ以上追い込めない」を、校長に届く根拠に翻訳できていなかった
- 生徒の「動けない」の奥にある感情を、両方に届く形で意訳できていなかった
つまり、僕は上の情報と下の情報を、そのまま流していただけでした。
流すだけなら、真ん中に人はいらない。だから真ん中の人は消耗するのに機能しない、という悪循環に入ります。
パーソル総合研究所の「就業・成長定点調査2024」では、「管理職になりたい」と答えた一般社員は17.2%にとどまっています(出典:パーソル総合研究所 就業・成長定点調査)。
「なりたくない」の理由の上位に、責任と報酬の見合わなさや業務量と並んで、「上と下の板挟みで疲れる」が入ります。
若手は”通訳が空席のまま消耗している中間管理職”を見て、「あそこには行きたくない」と判断している。これは中間管理職ひとりの問題ではなく、組織の育成パイプラインの問題です。
“板挟み”を”通訳”に変える、3つの練習
独立してから、経営者と現場社員の間に入る仕事をたくさんしてきました。研修の受注、AI導入の伴走、コーチング。全部、間に立つ仕事です。
そこで身についた”通訳の型”は、大きく3つあります。
練習1|言葉を”翻訳”する
上の人が使う「戦略」「エンゲージメント」「PDCA」は、現場では動きません。同じことを、現場が動ける名詞と動詞に置き換える練習です。
「顧客エンゲージメントを高める」を、「電話を切る前に、お客さんの名前をもう一度呼ぶ」に翻訳できるか。
抽象を、具体の一つの行動に落とす。これが翻訳の中身です。
練習2|感情を”意訳”する
現場の「もう無理です」の奥には、たいてい別の言葉があります。評価されていない気がする、先週の会議で言ったのに聞かれなかった、家庭の事情がある、など。
これを、経営者にそのまま渡すのは通訳の仕事じゃありません。
感情の中の”事実に近い部分”だけを意訳して、経営者が意思決定できる材料に変える。これが意訳の中身です。
練習3|沈黙を”間”として渡す
上と下の間に、答えが出ない話題はいつもあります。
そのとき、真ん中の人が急いで答えを埋めると、両方が「聞いてもらえていない」と感じます。
答えを出さずに、「両方の話を、こう受け取りました。次はいつまでに、どう戻します」と間を設計する。
この”間の設計”ができる中間管理職がいるチームは、意思決定が遅く見えて、実装は速くなります。
屋久島2泊3日の企業研修で、”通訳”を鍛える流れ
株式会社創(SOU)が屋久島で提供している企業研修は、2泊3日・6名まで1名18万円(税抜)です(出典:SOU公式サイト 企業研修・チームビルディング研修の料金)。最小催行は3名で、7名以上は人数に応じて変動します。
以下は、”板挟みを通訳に変える”をテーマにして組む場合の骨格です。個別の内容は事前カウンセリング(60分・オンライン)で組み直します。
Day1|森で”翻訳”を練習する

屋久島の森を歩きながら、参加者に自社の抽象語(戦略、ミッション、価値観 など)を出してもらい、「それが現場で1つの動作になるとどうなるか」を歩きながら翻訳し合います。
歩くと、脳が緩みます。会議室では出てこない言い換えが、森の中では出てきます。
Day2|焚き火の前で”意訳”を練習する

夜、焚き火を囲みます。
参加者ひとりずつが、自分のチームで最近聞いた「もう無理です」に近い言葉を思い出し、その奥にある事実は何かを言葉にする練習をします。
焚き火の前だと、人は仮面を外します。会議で言えない部分を、ここで意訳する練習ができます。
Day3|”間の設計”を持ち帰る

最終日、上と下の板挟みで止まっている具体的なテーマを1つ選び、両方に、いつ・どう戻すかの”間”をノートに書き出します。
戻ってから14日以内に、上と下の両方に一度ずつ、その”間”を実装する。
研修は、行った翌週で消えます。Baldwin & Ford (1988) の研修転移研究でも、研修で学んだことを職場で使えるかどうかは、環境要因と本人の実行意図で決まると示されています(出典:Baldwin, T. T. & Ford, J. K. (1988) Transfer of Training: A Review and Directions for Future Research. Personnel Psychology, 41(1))。
だから2泊3日の中で、”帰ってから最初の実装”まで書ききります。
1か月後にオンラインで振り返りセッションを行い、実装できた通訳と、詰まった通訳を持ち寄って、次の翻訳・意訳を練り直します。
板挟みを通訳に変えた中間管理職は、辞めにくくなる
「上と下に挟まれて疲れます」と言い続けていた中間管理職が、”通訳”という役割を持つと、疲れの質が変わります。
消耗する疲れではなく、意味のある疲れになる。
僕自身、教員時代の主任のときは、消耗する疲れしかありませんでした。
独立してから、経営者と現場の間で通訳をする仕事に変わったとき、体は同じくらい疲れているのに、朝ちゃんと起きられるようになりました。
役職を変えなくても、役割の設計を変えれば、真ん中の人は動きます。
よくある質問
Q1. うちの会社の中間管理職は数字目標に追われていて、通訳する余裕がないと思うのですが。
余裕がないから通訳ができないのではなく、通訳の型を持っていないから、少ない時間をさらに消耗する使い方をしている、という順番です。研修では、忙しい中間管理職が1日15分で使える翻訳・意訳の型を渡します。
Q2. 2泊3日の研修で、本当に通訳の力は身につきますか?
3日間で完成することはありません。3日間でやるのは、翻訳・意訳・間の設計の”最小の型”を体に入れることと、帰ってから最初の1回を実装できる状態にすることです。継続は1か月後の振り返りセッションと、社内での運用で作ります。
Q3. 少人数でも実施できますか?
はい。最小催行は3名からです。6名まで1名18万円(税抜)で、7名以上は人数に応じて変動します。20名を超える場合は複数会場に分けて実施します。
Q4. 屋久島以外での実施(出張型)はできますか?
出張実施の可否と料金体系については、事前カウンセリング(60分・オンライン)でご相談ください。
Q5. 費用に含まれるものは何ですか?
事前カウンセリング(60分・オンライン)、プログラム設計、3日間のファシリテーション、野外活動の安全管理(日本山岳ガイド協会認定ガイドが同行)、1か月後の振り返りセッション(オンライン)が含まれます。屋久島までの交通費、宿泊費・食費、現地での移動費は別途必要です。
著者情報
渡邉匠(ちげ)|株式会社創-SOU-代表。京都出身、大阪教育大学卒。カナダ山岳ガイド協会(ACMG)資格を取得後、バンフでトレッキングガイドとして働く。2016年から屋久島の通信制高校で教員として8年勤務し、主任時代のリーダーシップの空回りを経てコーチングと出会う。2025年に独立し、屋久島を拠点に企業研修・リトリート・AI導入伴走を提供している。屋久島在住10年。